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「世の中はチャンスにあふれている」キャリア教育の持つ真の価値とは~渡辺氏インタビューvol.2~

前回のインタビューに引き続き、株)コンコードエグゼクティブグループ代表取締役社長 CEOの渡辺秀和氏のインタビューをお届けします。キャリアのプロとして数々のビジネスリーダーのコンサルタントを経験し、東京大学での授業の設計と講義を担当した渡辺氏。その渡辺氏が送る東大生へのメッセージとは。


渡辺氏の略歴は以下の通りです。

一橋大学商学部卒。大手シンクタンク戦略コンサル部門を経て、(株)コンコードエグゼクティブグループを設立する。マッキンゼーやBCGなどの戦略コンサルタント、投資銀行、事業会社CxO、起業家などへ1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアを支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。2017年に東京大学で開講されたキャリアデザインの正規科目「未来をつくるキャリアの授業」のコースディレクターとして授業の設計と講義を担当。近年はコンコードベンチャーズによる、ソーシャルスタートアップ投資にも尽力している。

著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社刊)、『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社刊)など。


UTmap Times編集部

ここからは渡辺様のキャリア遍歴について伺っていきたいと思います。渡辺様はいつ頃からご自身のキャリアについて考えはじめたのでしょうか?



渡辺氏

中学校2、3年生の頃、将来のことや自分の在り方についてかなり悩んだことがあります。当時、私は将棋部に所属していたのですが、その部活に、非常に頭が良く勉強をしなくても成績がいい上に、将棋や芸術、スポーツに至るまで実に多才な天才肌の同級生がいました。しかも、性格も優しく思いやりがある。まさに非の打ち所がない素晴らしい友人でした。しかし、私は嫉妬心のせいで彼に冷たく当たっていたのです。そのような時に『アマデウス』というモーツァルトの生涯を描いた映画を見て、天才・モーツァルトに嫉妬するサリエリに自分を重ね、これはまずいと思いました。勝ち負けにこだわり結果に囚われて、他人と比較ばかりしてしまっている自分がいることに気づきました。やっていること自体を楽しむことが大切なのではないかと思い始め、自分の生き方について考えるようになりました。


当時は、勉強への関心が薄れ、部活や友人と遊ぶことが生活の中心でした。ただそのように自由な時間を過ごしていても、後で振り返ると有意義だと感じる時間と無駄にしてしまったと感じる時間があることに気付きました。自分が楽しいと感じる時間を増やしたいと思い、日々記録をつけるようにしました。そして1年ほど経ち、徐々に楽しい時間を長くできるようになりましたが、同時に、この記録をつけることで自分が好きなことや嫌いなことの要素を知ることができたのがとても良かったです。これが自分の人生の方向性を考える上で非常に役に立ち、人生相談業をやってみたいと考えるようになったのです。そして、この自己分析手法が、東大の授業でも紹介している「好き嫌い分析」です。人は、思いの外自分の好き嫌いをしっかりとは知らないものです。


UTmap Times編集部

中高生の頃から自己分析して、キャリアについて考えはじめていたのですか。とても早いですね。その後はどうされたのでしょうか。



渡辺氏

ただ、人生相談業に就きたいと言っても、銀行や商社といった会社はあるけれど、人生相談業などという会社は聞いたことがありません。仕方がないので自分で会社をつくるしかなさそうだが、社長と呼ばれる人に会ったこともない当時の自分には、起業などできるのか全く見当もつきませんでした。


そのような時、父の書棚に『ユダヤの商法』という本を見つけました。日本マクドナルドの創業者・藤田田さんが書いた本なのですが、孫正義さんも高校生の頃に感銘を受けたことでも知られています。自分もこの本に勇気をもらい、0から起業していくことも十分可能なのだと思うことが出来ました。


UTmap Times編集部

将来、人生相談業を起業しようとされた後、渡辺様はどうされたのですか?



渡辺氏

先ほど話したようなことが頭の中で固まりつつあったのは高校生の頃でした。当時、数学がとても得意でコンピューターにも関心を持っていたので、当初は京大で情報工学を学ぼうと思っていました。でも、起業するなら経営のことを学ばないといけないと思い、一橋大学の商学部を受験するため、いわゆる文転をしました。


社会人になる時もいきなり起業するのではなく、経営の基礎スキルを若いうちに身につけるため、ベンチャーキャピタル(VC)かコンサルティングファームに入社しようと考えました。ベンチャー企業の経営に携われる方が、自分のキャリアによりフィットするため、VCを第一希望にしていました。25年前は、日本興業銀行や三菱銀行などの銀行が圧倒的に人気のある時代でしたので、当時の学生としては、かなり変わった部類の就職活動だったと思います。父親にも、「なんで銀行に行かないんだ」とかなり反対されましたが、確かに普通はそう思いますよね(笑)。


無事にVCで内定を頂き、入社するつもりでした。しかし、私が想定していたようなハンズオンでの経営支援を、そのVCではまだ十分に行っていなかったことが分かってきました。そこで現時点では、経営コンサルの方が自分にフィットすると考え、シンクタンクの戦略コンサルティング部門へ入社することにしました。




入社した会社は、徹夜が当然の仕事環境でしたが、とても楽しかったですね。クライアントのために全力を尽くすことの大切さを叩き込まれたことは、経営者になってもとても役立っています。5、6年ほど経営コンサルタントの仕事に打ち込み、案件の受注もできるようになりプロジェクトの責任者になりました。当時最年少での昇格でした。ただ、プロジェクトをやっている中でも、社長個人や新規事業責任者個人の人生に寄り添って相談にのることが楽しく、やはり、自分には人生相談業が向いているのだなと感じました。


そして、人生相談に近い仕事として、エグゼクティブコーチングやカウンセリング、ヘッドハンティング、リーダーシップ開発など、様々な仕事をネクストキャリアとして検討した中で、キャリアコンサルタントの仕事を選びました。完全実力主義の人材紹介会社に飛び込み、5年連続トップとなる成績をあげた後、コンコードを設立しました。


読者の皆さんも、色々なキャリアを経ながら、ご自身の夢を実現してくことになるでしょう。その際、所属する企業では、経験を積ませて頂くことになりますので、在職中は全力で仕事に打ち込み、顧客と組織にしっかりと貢献することが大切だと思います。



UTmap Times編集部

その人材紹介会社に残るという選択肢はなかったのでしょうか。



渡辺氏

実は、かなり悩みました。「おかげで人生が変わりました」とまでご相談者から仰って頂けることもあり、日々やりがいを感じていました。しかしながら、その会社では従来の人材紹介業の枠を超えた、授業や出版を通じてのキャリア教育活動やソーシャルスタートアップ支援などの活動を行うことはできませんでした。


また、多くの人材紹介会社は自社を「営業会社」として定義づけています。もちろん、それ自体がおかしいわけではありません。ただ、私が理想としていた組織は、目先の利益を追わず、長期的な視点で人生を支援する「プロフェッショナルファーム」でした。そのため残念ながら、卒業して自分で会社を立ち上げることにしたのです。


UTmap Times編集部

ここからは、「キャリア戦略」についてもっとお聞きしていきたいと思います。まずは、キャリア戦略がなぜ重要なのか教えてください。



渡辺氏

キャリア戦略とは、自分が望む人生を実現するためにどういうキャリアステップを踏めばいいのかを中長期的な視点から考えたプランのことです。一般的な転職とこの戦略に基づいた転職はかなり異なってきます。


一般的な転職支援では、同業界や同職種でのキャリアアップを支援することになります。もちろん、それ自体は全く問題なく、そのようなキャリアアップを志向される方も多数いらっしゃいます。


一方、キャリア戦略に基づく転職支援では、目指すキャリアビジョンをまず設定し、それに向けて必要なスキルや知識を身につけるためのプランを設計します。もし、今のスキルや職歴では、理想とする仕事に一足飛びに就けないのであれば、中間地点となる仕事に就く「キャリアの階段」をつくり、理想とする仕事を目指します。


また、幅広い業界や職種から入社が可能で、色々な業界の経営幹部職へ転身可能な特殊なキャリアも存在します。私たちは、それをハブ空港になぞらえて、「ハブ・キャリア」と呼んでいます。これをキャリアの階段として活用することで、ダイナミックなキャリアチェンジも可能になります。



人材市場に精通すると、このように様々なキャリア戦略が存在することが分かりますし、新たに編み出すことも可能になります。また、時期によっても採用企業の難易度が変動するので、新たなキャリアパスが開けることもあります。


重要なのは、キャリア戦略を持つことで、自分の目指すゴールや夢をあきらめることなく、自分の手で道を切りひらける可能性が飛躍的に高まるということです。これが、キャリア戦略のもたらすインパクトですね。学生の皆さんも「配属リスク」という言葉を聞いたことがあると思います。所属企業の人事異動で、希望が叶うのを運任せで待つのは不安だという人は、ぜひご自身のキャリア戦略を持ち、自分の手で道を切りひらいていってもらいたいと思います。


また、現代の人材市場はとても発達しているので、若いうちから高いポジションにつけるような「キャリアの高速道路」がたくさん通っているのです。上手にキャリアの高速道路に乗れば、若いうちから自分の夢や志を叶えられる時代になっています。



UTmap Times編集部

なるほど。主体的にキャリアを意識して動くことで、早くかつ確実な道を切りひらける時代になっているということですね。



渡辺氏

そうです。現代の人材市場では、外部から優秀な人材を採用するために、高いポジションと好条件を用意する企業がものすごく増えています。従来は、外資系企業やプロフェッショナルファームが中心でしたが、今ではキャッシュリッチなベンチャー企業や日系大手企業も好条件を出し、かなり積極的に採用を行っています。市場ですから、採用企業が増えることで、評価の高い人材には、どんどん高い条件が提示されるようになっています。今では、30代前半で1500~2000万円というような話は珍しくなくなっています。


一方、「自分は、日本の安定した大企業に入るから、転職の話は関係ない」と思う人もいるかも知れません。実際、そのような大組織でなければ出来ないような社会的インパクトの大きい仕事もあります。私自身も社会起業家ですので、そういう企業を選択することも素晴らしいことだと思っています。ただし、「安定しているから」という理由で選ぶのであれば、お薦めはしません。既に大企業の雇用安定神話は崩壊しており、外資企業に買収されたり、GAFAのような巨大IT企業に業界そのものを潰されたりすることも、珍しくなくなっています。大企業に勤める人も、いざというときには転職できるように、備えておくことは重要な時代になっています。



UTmap Times編集部

しっかりと頑張れば、チャンスにあふれている社会になっていることがよく分かりました。ありがとうございます。

一方、まだやりたいことが明確でない学生もいると思います。そのような人にお薦めのファーストキャリアを教えて頂けますか。


渡辺氏

もちろん、キャリアビジョン次第で、選ぶべきキャリアは変わってきます。ですが、まだどんな業界なのかは分からないけれど、いつかは会社をリードして、世の中を良くしてみたいと思っているようであれば、経営者や起業家を目指す上で役立つハブ・キャリアがお薦めです。経営スキルを身につけるという意味では、コンサルティングファームは有力だと思いますし、デジタル系ベンチャー企業も魅力的だと思います。卒業後、幅広い業界の事業開発ポジションや経営幹部ポジションへ転身できる可能性があるので、取り組むテーマが明確に決まっていない人にも向いています。


また、入社した後で想定外の仕事をやらされることがない、若いうちから業界や組織を跨いだ汎用的な問題解決能力が身につくという点でプロフェッショナルファームは、事業会社の総合職とは一線を画していることも理解しておく必要があるでしょう。

UTmap Times編集部

今、私たち学生は何をしておくべきかについて教えて頂けますでしょうか。



渡辺氏

まずは、自分の好き・嫌いや価値観をざっくりでいいので把握しておくことが重要でしょう。自分の中に軸がないと、何を選択すべきかが決まりません。時間に余裕がある学生のうちによく考えておくべきだと思います。そうしないと、世間的に有名とか、人気があるからといった自分の外にある価値観で選択することになってしまいます。日記をつけて好き嫌い分析をするのもお薦めです。


また、自分の好き嫌いを検証する、小さく試すという意味でぜひインターン経験を積んでもらうといいと思います。自分の価値観がより深く分かりますし、さらにビジネスパーソンとしての基礎スキルも身につくので非常に有意義な経験になるでしょう。これは社会人のスタートを切るうえでとても役立ちます。早いうちから能力を発揮し人の役に立てれば、自分もその仕事が楽しくなっていき、スキルを身につけて頑張るモチベーションがますます上がっていくという、「貢献の良循環」に入ることができます。こういうときはエネルギーが内からどんどん湧いてきます。


この良循環は人生の様々な場面でとても大事です。皆さんも振り返ってみれば、勉強にしても、部活にしても、良循環に乗ってうまくいったことが多いのではないでしょうか。まさに仕事も一緒ですね。反対にスタートダッシュに失敗した場合は、ここは踏ん張りどころと割り切って、良循環に乗るまで頑張るのが大事です。



もう一つお伝えしたいのは、ワークライフバランスの考え方についてです。最近は、ワークライフバランスが悪い会社=ブラック企業、悪だ、と考える学生も少なくありません。もちろん、いくら残業しても雇用契約通りにお金を支払わないといった法的に問題がある会社は、良くないでしょう。

しかし、若いうちにバリバリと働いて、高いスキルを身につけることは、誰のためなのでしょうか。長期的なスパンで考えれば子育て、親の介護、自分の体力低下など、様々なライフイベントがやってきます。今、30代後半や40代でエグゼクティブとして活躍しながら、家族との時間も謳歌しているご相談者の皆さんも、20代の頃は終電まで働いたりしてきています。当然、若いうちに高いスキルを身につければ、その分高い収入も早くから得ることができます。そして更に魅力的なポジションの話が舞い込むといった「キャリアの上昇気流」に乗ることができます。体力的に問題がないのであれば、若いうちにハードワークをしておくことは、後の自由を得るうえで有力な手段となるでしょう。長時間労働が悪なのではなく、成長の見込めない仕事を延々とやらされるのが悪なのです。昨今の風潮は、残念ながらメディアの影響も大きいと思います。


UTmap Times編集部

ありがとうございます。若いうちに努力してスキルを身につけることが、人生をトータルで見たときに大事ということですね。

最後に、東大生に向けて一言メッセージをお願いします!



渡辺氏

今の世の中はチャンスにあふれているということを知って欲しいです。主体的に行動する価値がありますし、キャリアを真剣に考える意義があります。新卒として入る今が最も自由度が高い、いわばハブ・キャリアの状態なので、選択肢の広い今をぜひ大切にしてください。



UTmap Times編集部

本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました!

 

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