• UTmap Times 編集部

「世の中はチャンスにあふれている」キャリア教育の持つ真の価値とは~渡辺氏インタビューvol.1~

今回は、株)コンコードエグゼクティブグループ代表取締役社長 CEOの渡辺秀和氏のインタビューをお届けします。キャリアのプロとして数々のビジネスリーダーのコンサルタントを経験し、東京大学での授業の設計と講義を担当した渡辺氏。そんな渡辺氏自身のキャリアや、キャリアのプロとして学生のアドバイスなどをインタビューさせていただきました。今後のキャリア設計の足掛かりとして、このインタビュー記事は必見です。


渡辺氏の略歴は以下の通りです。

一橋大学商学部卒。大手シンクタンク戦略コンサル部門を経て、(株)コンコードエグゼクティブグループを設立する。マッキンゼーやBCGなどの戦略コンサルタント、投資銀行、事業会社CxO、起業家などへ1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアを支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。2017年に東京大学で開講されたキャリアデザインの正規科目「未来をつくるキャリアの授業」のコースディレクターとして授業の設計と講義を担当。近年はコンコードベンチャーズによる、ソーシャルスタートアップ投資にも尽力している。

著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社刊)、『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社刊)など。



UTmap編集部

東大で「未来をつくるキャリアの授業」を行うことになった経緯を教えていただけますか?


渡辺氏

私はこれまで20年近く、経営幹部や次世代リーダーのキャリア支援に携わってきました。ご相談者は、まさに読者の皆さんの先輩にあたる東大卒や早慶卒の方がとても多いですね。そのご支援の中で、「キャリア戦略という考え方を知り、とても役に立ちました。ただできれば、学生時代からこれを知っておきたかったです。」と言われることがよくありました。

実際、キャリアデザインはどなたにとっても大事なものですが、残念ながら日本の学校教育では、本格的に学ぶ機会がほとんどありません。そのため日本の多くの人に、キャリアデザインに関するノウハウを知って欲しいと考えていました。書籍を出版したのも、その一環です。このような教育環境に一石を投じるために、以前より大学や高校でキャリア教育を行っていくことも考えていました。

そのような時、東大卒の新入社員が入社したことがきっかけで、彼が学生時代にお世話になった松島先生と私がお会いする機会がありました。大学の運営や研究者のキャリアについて、ざっくばらんにお話しいただけたことを覚えています。

後日、私の著書をご覧になった松島先生から、書籍をベースにキャリアデザインの授業を開講できないだろうかというお話をいただき、松島斉先生、岡崎哲二先生と一緒に授業を立ち上げていくことになりました。




UTmap編集部

そのような経緯だったのですね。松島先生、岡崎先生の授業は私たちも受けていました。とても人気のある授業で多くの学生が授業に出席しています。

ぜひ、「未来をつくるキャリアの授業」の内容について詳しくお伺いできればと思います。



渡辺氏

授業は、2017年のAセメスターに「キャリア・マーケットデザイン」という授業名で開講されました。対象は全学部の3年・4年・院生で、経済学部の学生だけでなく、法学部や工学部の学生も多数受講していました。全12回の授業は、毎回300人近くの学生が出席していて、すごい熱気でしたね。

1回目、2回目の授業では、キャリア戦略を持つ意義や具体的な設計方法を扱いました。ビジネスパーソンを取り巻く環境の変化や人材市場でどのような人が高い評価を受けるのかを知り、学生の皆さんにも大きな衝撃があったようです。

3回目から10回目までは、リアルケーススタディとして、マッキンゼー出身の女性エグゼクティブ、社会起業家、総合商社出身のエグゼクティブ、大手IT企業の経営幹部などを招き、対談形式で実施しました。対談では実際に働いて感じた仕事の喜びや辛さ、ワークライフバランス、皆さんのキャリア戦略などを赤裸々に語ってもらいました。松島先生にはアカデミックキャリアについてお話頂きました。学生も普段聞くことのない、研究者としての熱い想いを知ることができ、大いに刺激になったようです。

11回目の授業では就活を成功させる方法、社会人としての心構えについて話しました。就活については、具体的な面接の準備方法、エントリーシートの書き方のコツなど、実践的な話。社会人としての心構えについては、スムーズなスタートとのために学生のうちにしておくべき準備を紹介しました。就活においても、社会人デビューにおいても、インターン経験は大いに役立つのでお薦めです。

最終回は、松島先生、岡崎先生、私の3人で事前打ち合わせなしの座談会を行いました(一同笑)。AIが一般的になった世の中はどうなるのか、幸せな働き方とは何か、東大の組織運営についてなど、色々な話題についてフリーディスカッションしました。学生からも、バンバンと質問の手があがって非常に盛り上がり、最終回を締めくくるのにふさわしい授業となりました。



UTmap編集部

ぶっつけ本番の座談会、とても面白そうですね(笑)。大教室の授業でそんなに出席率が高いことにも驚きますし、学生が積極的に質問するというお話にもびっくりしました。授業の反響や学生の様子はいかがでしたか?


渡辺氏

とても印象的だったのは、授業の回を経る中で、学生の皆さんがどんどん成長していったことですね。毎授業で提出してもらう感想文が大きく変化していき、驚きました。授業を開始して間もないころは、「働くのはつまらなさそう」、「社会人になることが不安」、「ワークライフバランスのよい会社に入れればいい」といった声も決して少なくありませんでした。しかし授業の中で、キャリア戦略の設計法を学び、自分の好きな道で生き生きと活躍するゲストを見ることで、「自分の未来は、自分で切りひらくことができる」、「他者や社会に貢献することはとても楽しいことなのだ」といったことをつかんでいってもらえたようです。

また、毎回授業が終わったときに、学生たちが大きな拍手をしてくれていたことも印象に残っています。ゲストや私などの登壇する人たちの想いをしっかり汲み、一緒に授業を良い場にしようという、学生の皆さんの主体的なスタンスが、とても嬉しかったですね。出席率も非常に良く、念入りに準備した甲斐がありました。

感想文の中で、「キャリア教育とは大学のアカデミアと全く関係のないものであり、正直大学で講義を行う必要はないと思っていた。しかしこの講義は、大学での学びをどう社会に還元するかという、まさに大学教育に不可欠なものであると理解できました」、「この講義は、東大1年生全員に受けてもらうべき」といったコメントもありました。将来、各界でリーダーとして活躍する皆さんにキャリア教育の重要性を理解してもらえた点でも良かったです。日本の未来をより良くしていくために、キャリア教育は必要不可欠だと私は考えています。

UTmap編集部

今、お話いただいた授業の目的のひとつでもあったと思うのですが、他に授業を通じて学生に伝えたかったことはありますか?


渡辺氏

大学や高校までは基本的にはサービスを享受する側にいます。勉強が忙しいといっても、それは自分のためにしていることです。しかし、社会人になるとサービスを提供する側に立つことになります。すなわち自分が他者や社会に貢献することが求められるようになるわけです。これはとても大きい変化ですが、どのように向き合うべきかをしっかり学ぶ機会は、あまりないでしょう。「自分の幸せと他者や社会へ貢献を両立、調和させる」という生き方を、単なる精神論ではなく、実現するための具体的な方法を、学生の皆さんに伝えたいと思っていました。これには成功したエグゼクティブの体験談を聞くだけでは、不十分です。学生が応用しやすいように、体系化して伝えることが大切なのです。


UTmap編集部

仰る通りだと思います。成功者の話を聞くとエネルギーは湧きますが、「で、自分はどうすればいいの?」と思うこともあります(笑)。

実際に授業をされてみて、東大生の印象はいかがでしたでしょうか?


渡辺氏

社会を良くしたいという想いや独善的ではないパブリックな視座があるなという印象を受けました。私自身も数多くの東大卒のご相談者と会ってきていますが、そのような方が多かったのでイメージ通りでした。

あと素晴らしいと思ったのが、社会の新しい動きを知っている学生が多いということです。実際、東大には学生起業をしている人も多いですよね。コンコードも東大のAI領域の博士が率いるスタートアップへ出資していますが、優れたベンチャーが多いですね。これは優秀な人材が多いことに加え、理系と文系の交流が多いということも影響していそうです。今の時代は文理融合的に両方の見識を持つことが大事なので、これは東大の大きな魅力だと思います。

印象に残っているのが、今まで親や周囲の期待にしっかりと応えてきたが、いざ自分の好きにして良いと言われると何をしていいのかが分からないという学生が少なくなかったことです。好き嫌いではなく、得意不得意を軸に意思決定してきたことに気づきましたいう声もありました。

また、「大学まで学んできたことが社会に出るとあまり役に立たない」と先輩たちから言われることへのショックが他大学の学生以上に大きいようです。その気持ちはよく分かります。まさにこのあたりは、私が教育改革が必要だと考える理由でもあります。


UTmap編集部

非常に共感できます。実際に理系と文系の交流が比較的多いことでたくさんの刺激を得られていると思います。一方で、今までは敷かれたレールの上をただがむしゃらに進んできただけですが、これからどう進んでいけばいいのか、レールの行き先が無限に広がっているからこそ、どのようなキャリアを進んでいけばいいのかわからなくなってしまうということがあります。

渡辺氏のインタビューの前半はここまで!後半は12月5日に公開予定です!


 

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